数年前から話題になっている「スメハラ(スメルハラスメント)」。私の会社にもよく会社さんからスメハラの解決方法についてご相談があります。本人に対して直接ニオイのことを指摘すればパワハラと取られかねないし、かといってそのままのニオイのままだったら他の社員がスメハラだーとなるし、、、。と八方ふさがりの会社さんが多い印象です。
スメハラはニオイを感じている側の苦痛が発端であるにせよ、知らない内にニオイを発してしまっている本人に対して、いかに傷つけずに伝えればよいのか、また伝えられたとしても会社さん側には効果的な改善策の提案が何も無い、という事も大きな問題になってきます。
今回は、スメハラについてニオイの「受け手」と「発し手」の両方の視点から考えていきたいとおもいます。
会社→隣がニオイに敏感な人→恐怖? or 気にしない?
7月2日ですから、つい最近のYAHOO!ニュースでの話です。DIAMONDonlineというところがリリースした「女子の天敵「臭すぎる営業マン」はスメハラ研修で生まれ変わったか というニュースが話題になっています。(いや、私の身の回りだけかも知れませんが)
内容は多岐に渡ります。書いたのがどなたなのかは分かりませんが、社会保険労務士の石川弘子さんという方の名前が書かれています。本文は以下のURLからご覧いただけます。
https://diamond.jp/articles/-/207256
内容はというと、20代後半の女性社員(A)とその隣の席の見た目がだらしない20代後半の男性社員(B)とのスメハラ問題。女性社員はオシャレ女子を自認している、仕事の出来るタイプ。男性側は仕事は普通レベルなのだが、お客さんからクレームが出るレベルのだらしなさ。現場は当然、会社ですね。都内の150人程度の専門商社とのこと。勿論、ある程度創作であるでしょうし、人物設定や会社の業態などはまるっきり創作だと思います。なんせ、その旨、本文最後に書いてありますから。仮名も書いてありますが、私は面倒なのでA・Bと書きますね。
ある日、男性社員(A)のあまりの臭さについて女性社員(B)は直属上司の課長に訴える。「『身なりに気を使ってください』と何度も言っているのに、『いちいちうるさい』と反発し、全く取り合ってくれないんです!」
しかし、直長である課長さんは同じ男同士だから、オシャレ女子が何でそんなに怒っているのか、イマイチ実感として感じられない。だから若干、男性社員(A)をかばい気味のやり取りがひとしきり続きます。やがてオシャレ女子は腹に据えかねて「これはスメハラです!」「前にAさんの隣に座っていた派遣さんもクサイからという理由で辞めたんですよ!」「席替えしてくれないと私辞めます」と課長に詰め寄る!
ここでようやく課長さんも「これはやばいな」と思い立つが、注意をするにしてもパワハラで訴えられることが怖い、という成り行き。
スメハラの相談事例
何かあるあるの設定ですよね。でも、実際にこういうシチュエーションって、あるのかなぁ。勿論、直属上司とニオイを発散する側・ニオイを迷惑だと感じている側の、それぞれの人間関係や力関係で、割とズケズケ行ってしまうケースもあるのだろうけれど、確かに直属の上司がいきなり本人に「君、周りの人が君のニオイで迷惑しているよ」っていう話は言いにくいでしょ。確かにパワハラで訴えられるケースにもなり得る、と考えられます。
人事・総務部からの陳情
私の所に相談が来るのは、直属の上司さんではなく、だいたいが人事部の方や総務部の方ですね。そして他人のニオイに悩んでいる当事者が人事部などに直接陳情する、というケースばかり。直属の上司だと言いにくいとか、言っても及び腰で何も対処してくれない、というケースが多いのだと思います。
パン屋さんの例「パンにニオイが付いている気がする」
件の男性社員Aについては、お客さんからのクレームも入っている、という話も書いてあり、これは本当にある話です。ある「パン屋さん」さんからの相談を受けたことがあり、その経営者さん曰く「お客さんから『工場がクサくてパンにニオイが付いている気がするから、取引を止める』と言われて困っている。良い従業員なのだが、何とか体臭を改善させてほしい」とのこと。まあ、実際にその工場へ行ってみてご本人さんに会ってみれば、確かに体臭に多少の問題がある。但し、それがパンに付くなんてことは無いですよ。これはあくまで「お客さん」が「件の従業員さん」の体臭を感じた上でのイメージというケースと思います。
スポーツジムの例「会員が辞めていく」
また、ある「スポーツジム」の店長さんから「確かにニオイが凄いんです。それが嫌だって言って、会員さんが来にくくなったらどうしよう…」という相談も現在進行形で受けています。汗をたくさんかくくらいに体温が上がるそういう仕事、密室という事を考えると、実際に、そういう会員さんがいてもおかしくないかも知れません。店長さんは、まず「とにかく体臭検査を受けさせて改善させたい」とおっしゃってますが、パン屋さんの事例も含めて、ご本人の同意を得るのが難しい。共通して言えるのは「体臭問題以外はすごく良い従業員さんなので会社の為にも本人の為にも何とか良い状態にしてあげたい」という優しい心持ちからの相談だという事。
スメハラは抱えたくて抱えている訳ではない
ひとつ、私の立場(つまり体臭改善に臨むべき状態にあるユーザーさんを含めてということです)から言えることは、不潔だからクサイ、だけが体臭問題ではないし、大半の(当社ユーザーさんは全員)体臭問題を抱えている方は、前述の「男性社員Aさん」のように、体臭問題を抱えようとして抱えたわけではない。ということです。
スメルハラスメントとは、直訳すれば「ニオイ的嫌がらせ」となるわけですが、嫌がらせしようと思って体臭問題を抱えているわけではない、という事。確かに上記のケースでは他人の体臭に困っている人が主役となっているけれども、本来は体臭問題を抱えている人が「自分に対する被害者」である点を見逃してはならない、ということです。だから体臭そのものに問題がある場合、「スメルハラスメント」という言葉は、あまりにも酷い、と、私は考えます。
それでも「企業の仕事に支障をきたす」というケースは解決すべき懸案であり、解決に導くのは企業の側でもある、という事も言えます。これを私は「スメルハザード」と呼んでいます。誰かの体臭が企業利益の損失に繋がる可能性がある、という意味で「ニオイの障害」という程度の意味合いです。
実は、「ダイアモンドオンライン」の記事は、まだ続きます。私の話も続きます。次回をお楽しみに!